他の数学ガールシリーズのレビューはこちら
・数学ガール4・乱択アルゴリズム
・数学ガール5・ガロア理論
基本情報
著者:結城浩(1963年生)
出版社:ソフトバンククリエイティブ
初版発行:2008年8月3日(借りた本だが、第8刷だった(2010年))
ページ数:355ページ
全体の感想
順番ばらばらで読んでいるので、5巻のガロア理論、4巻の乱択アルゴリズムの次に読了。個人的にまとまった休みになったときに代数を数学の教科書を用いてしっかり勉強したいと思っていたので、数学ガールシリーズの中でも代数的な色が強いこちらを読了。
この本も具体例が丁寧に説明で面白かった。章立てに関しては4,5巻に比べると作者もまだなれていないせいか、少し構成は複雑だったが、互いに素や背理法と行った基本的なことがらから丁寧に解説されていてとても良かった。読みやすさも工夫してあるので、わかる部分はパラパラと読んでも一通り内容を理解できるのがとても良い。
今作で印象的だったのはやはり最近、代数に興味があることもあって、7章にあった剰余環と体の関係や有限体について。このあたりの説明もとても丁寧で面白かった。
あと第5章の「砕ける素数」という言い回しが納得感があってとても良かった。
5巻のガロア理論もそうだったのだが、10章がおもすぎる。ガロア理論の方はそれでも10章への導入の章が3つくらいあってそこにも前もって説明があったため、わかりやすかったのだが、今作は10章からいきなり「保型形式」などの新しい概念がどんどん導入されるので流石に理解するのは難しかった。ただ、証明の全体像がわかるようにする努力はなされており、それだけでも十分価値があるし、これから勉強しようという人には大いに助けになると思う。
(個人的に数学の教科書はHowではなく、whatが書かれており、それをどのように導いたかなどは自分で考える必要があるので(それを自分でやることによって初めて理解できるのかもしれないが)、Howの部分を重視しているこのような本は苦手な人にとってとても助けになると思う。)
章立てについての考察
今作は前読んだ2巻と比べて、フェルマーの最終定理を説明するために他の章があったかというと、そのためではあると思うが足りない部分も多いように感じた。それでも要約することで理解につながると思うので、本書でも試みたい。(最後に図をつけるのも習慣になっている、百聞は一見に如かず、今回も行いたい。)
各章の数学的内容まとめ
登場人物については追う必要もないかなと感じたので今回は数学的内容だけまとめる
第1章 無限の宇宙を手に乗せて
完全巡回
第2章 ピタゴラスの定理
原始ピタゴラス数の個数(ピタゴラ・ジュース・メーカー)
第3章 互いに素
互いに素
第4章 背理法
背理法
第5章 砕ける素数
複素数体での因数分解、ガウスの整数
第6章 アーベル群の涙
群、アーベル群
第7章 ヘアスタイルを法として
剰余環と体、有限体
第8章 無限降下法
無限降下法、n=4のときのフェルマーの最終定理の証明
第9章 最も美しい数式
オイラーの公式、べき級数展開
第10章 フェルマーの最終定理
フェルマーの最終定理、楕円曲線、半安定、還元、保型形式
各章ごとの関係
今回も図にしてみたが、他の本ほどきれいではない気がすぎる。なにしろ10章の内容が圧倒的に重い。また、数学の分野的に分けるのが難しそうだったので、今回は「準備フェーズ」と「実行フェーズ」に分けて分類してみた。
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