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人の暮らしを変えた植物の化学戦略 書評

本レビュー
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基本情報

著者:黒柳正典(1968年生の生薬学、天然物有機化学、有機立体化学の教授)

出版:築地書館(サイトを調べてみたが、結構植物系の本が多かった)

リンク:Amazon

読み方

通勤中に読む本を探しに東京のでかい本屋に行って購入。
2000円もする本を自腹で購入するのは久しくしていなかったので、それなりに中身を読んでみて興味を持ったから買った本ではある。
本屋は中がたくさん見ることができるのはやっぱり良い。

感想

面白かったが、各植物について浅く広くといった感じ、個人的なニーズにはあっていたので良かった。
この本は植物が作り出す化学物質を人間がどう役立てているかに焦点が当てられている。
個人的には植物がどうしてこのような化学物質を作っているかのほうが気になったが、それはこの著者の前著である「植物 奇跡の化学工場」のほうが詳しい。

この本は人間にとってどのように有用かに基づいて、化学物質、植物が章立てされている。

第4章 色素
第5章 機能性物質(基本的に抗酸化物質)
第7章 医薬品
は化学物質で分類されてされており、
第2章 香り、甘み
第3章 スパイス、ハーブ、苦味物質
第6章 生薬
は植物で分類されている。

本書では様々な化学物質が紹介されるのだが、全部の化学構造は掲載されていない。
個人的には全部書いてほしかった。
また、テルペンなどの簡単な化学物質については説明無しでバンバン使われるのだが、自分でネットで調べればよいのはわかっているが、最初に基本的な化学物質の説明があっても良かったかなとは感じた。
(なので、多少の前提知識は必要な本だと思う)

様々な植物が紹介されているという点では個人的にもっと植物のことを学びたいと思うようになった。
そういう点で初めて自分で購入してまで買った本という意味では良かったかもしれない。

以下では各章ごとの個人的に感想・まとめを書きたい。

第1章 植物が支える地球の生命

こちらがどちらかというと、上記で述べた著者の前著「植物 奇跡の化学工場」に近い内容で個人的には面白かった。
また、植物の生合成経路による二次代謝産物の分類の項は特に興味深く、

  • テルペノイド
  • ポリケタイド
  • フェニルプロパノイド
  • フラボノイド
  • アルカロイド

という分類方法があるらしく面白かった。
すべて語尾が-oidとなっているが、これは「~のようなもの」という意味なので、かなり人間が恣意的に分類しものであると思う。

この章が面白かったのもあり、著者の前著は読んでみたい。
(こういう何度も同じものを指したいときはどうすればよいのだろうか、代名詞ではちょっと遠いし。。)

第2章 鳥・虫・人を惹きつける香りと甘み

香りの化学物質

揮発性がある低分子の化合物が多く、一覧の図が面白かった。

甘み物質

糖による甘みに加えて、さまざまな甘味料の化学物質があり構造を比較しながら読むことができて面白かった。
また、ミラクルフルーツの説明も面白かったが、個人的にはyoutubeに上がっている以下の動画がわかりやすくて良い。

「話は逸れるが、このyoutube動画はゆっくり実況なのだが、ゆっくり実況の動画はたくさん画像やネタを入れてくれるので、覚えやすくてとても助かっている。人間が記憶する際には既存の記憶ネットワークと多く結びつきがあるほど覚えやすいと個人的には思っているので、自分の詳しいと思う分野に例えたり比較しながら、学べる教材がベストだと思う。」

第3章 食害忌避の辛味と刺激物質

植物は花粉を昆虫に、種子を哺乳類や鳥類に運んでもらうという戦略をとっているが、化学工場である葉を食べられるのは嫌い。また種子についても確実に運んでもらうように動物が嫌がる物質を作ったりする。そのような物質を人間がどのように利用しているかをまとめている章

スパイス

それぞれのスパイスが結構独特の成分を持っているのが興味深かった。(サンショウのサンショオール、ショウガのショウガオール、ウコンのクルクミンなど)
ワサビとカラシはどちらもアブラナ科で辛味成分は一緒というのは有名だが、揮発成分が異なるため、匂いが異なり食べたときの風味は結構違うという記述があり、興味深かった。(西洋ワサビと日本のワサビも風味が違うらしい)

ハーブ

ハーブは香りを楽しむものである成果、炭素数10程度の低分子化合物が多い。
ここでもベンゼン環大活躍

苦味物質

コーヒーや茶、チョコレートの他に柑橘類が入っていたのが以外だった。
確かにグレープフルーツは苦い

第4章 花や果実の色素を楽しむ

アントシアニンベタレインカロテノイドインジゴなど
数が少なくページ数も少ないせいかわかりやすくて良かった。

緑は葉っぱが緑だから要らないのかな?

第5章 植物基源食品の機能性物質

抗酸化物質を化学構造から分類する章で面白かった。

基本的にはポリフェノールもフラボノイド(アントシアニン、カテキンなど)もカロテノイド(βカロテン、アスタキサンチン、リコピンなど)もフェノール基が酸化されることで抗酸化作用を発揮している部分は共通で面白いなと思った。

ちなみにポリフェノールという言葉はフェノール基を持つ植物成分の総称なのでかなり広い意味の言葉。

第6章 植物は生薬の宝庫

著者の専門ということでかなり詳しかったがちょっと長かった。
漢方薬の由来などを知れるのが面白い

第7章 植物基源の医薬品

第6章の医薬品版。もともと植物から発見されたものだが、現在は化学合成によって医薬品として使われている化学物質たちを紹介している。

医薬品ということで毒関連の植物が多かった。

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